元カレバンドDX

「シャワーいいよ」

 下半身にタオルを巻いた北斗が出てきた。

「あ、はい……」

 緊張した足取りでバスルームへ向かいシャワーを浴びる。

 ザーッと流れる水の音を聞いていると、少しの間だけ無心になれた。

 ときに、考えすぎるあたしの思考を止めたいと思うことがある。

 なにも考えずに息をしたいと思うことがある。

 だからあたしは、なにも考えずにバスルームを出て、なにも考えずに北斗のもとへ近づいた。

 なにも考えずに北斗に抱かれて、なにも考えずに朝を迎えた。

 広いベッドのあたしの横で、スヤスヤと寝息を立てる北斗を見て、あたしの思考はまた働きだす。

 あぁ、やっぱりこの人のこと、スキすぎて仕方ないわ――