元カレバンドDX

「このあとなんか予定ある~?」

「あ、ないですけど……」

「じゃあ車で家まで送ってくから一緒にごはん食べようよ」

「え!?いいんですか!?」

「うん。今からパスタ作るからテレビでも観て待ってて」

「あ、はい、ありがとうございます……」

 胸の奥がじわっと熱くなった気がした。

 そのままキッチンに向かう北斗の背中を見送って、あたしもテレビのあるリビングへと移動した。

 男の人の手料理を食べるなんて初めてだ。

 一緒にごはん食べようよ――

 家まで送ってくから――

 パスタ作るから待ってて――

 北斗の言葉が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。

 せっかく魔法をかけたのに、これじゃあ解けてしまうじゃない……

 優しくされたいのに、優しくされたくない。

 あたしは、いつからこんなワガママな子になったのだろう。

 苦しくて、でも嬉しくて、あたしはぎゅっと唇を噛んだ。

 そうでもしないと、涙が溢れてしまいそうだったから。

 この気持ちは、もう止められないよ……

 ちょっとだけ傷ついた下唇の粘膜から、ほんのりと血の味がして、あたしはホッと安堵した。

やっぱりこれは、夢じゃないんだって思ったから――