元カレバンドDX

 ヘッドフォンを外し、ボーカルブースから出ると、あたしはさっきまでいた場所に戻った。

「じゃあ、サビのところ書き直してね」

 にっこりと笑う北斗に、あたしも笑顔で返事をした。

 ソファーの前にあるガラス製のローテーブルは、ソファーに座りながら字を書こうとすると、ちょっぴり低かった。

 なのであたしは、床に座って歌詞を書き直すことにした。

 カバンからペンケースを取って、「さぁ、書こう!」と気合いを入れたときだ。

 テーブルの向こう側で、ごろんと床に寝転がる北斗が見えた。

(“#$%&‘#$%”#!?!?!?!?)

 あたしは驚いて、目をぱちくりとさせる。

「ちょっと横になるね。昨日あんまり寝てなくて」

「あ……はい……おやすみなさい……」

 透明のガラステーブルのせいで、横になる北斗の身体が、実際より近くに見えた。

 あたしに背中をみせる北斗を、なんだかすごく愛おしく思う。

 気づかれないように、そっと触れてみたいとさえ思った。

 だからあたしは、自分のこころに強く魔法をかけたんだ。

 ごまかそうとしても、ごまかしきれない。

 あたしは初めて北斗に会ったときから、自分の気持ちに気づいていた。

 けれど、こんな恋は叶いっこない。

 だからあたしは、自分のこころに強く魔法をかけたんだ。

 決して好きになってはいけないんだと――