元カレバンドDX

 そうだ。

 別に、理由なんてどうでもいいではないか。

 今、こうやって2人でいられることに、理由なんて必要ないのだ。

 あたしは、北斗に、演劇や音楽の質問をたくさんした。

 北斗は、丁寧に答えてくれたけれど、あとから思えば、もっとほかに聞くべきことがあった気もする。

 だって、あたしは、今この瞬間、北斗をひとり占めにしているのだから――

 時間が経つにつれ、ほかのお客さんも徐々に増えてきた。

 さっきまで、あたしと北斗しかいなかったラウンジは、今は少しだけにぎやかだ。

「おー北斗おつかれ~」

 声のする方を振り向くと、ひとりの見知らぬ男性が立っていた。

 男性は、あたしたちのテーブルに座ると同時に北斗と話し始めた。

 話を聞く限り、どうやら彼は北斗の友人らしかった、そして、あたしを見ておもむろに北斗に尋ねた。

「そういえば、この子だれ?」

「ん?陽愛だよ。お友達」

 言って、北斗はあたしの方を見てニコッと笑う。