元カレバンドDX

「まだ早いから、そんなに人来てないけど」

 初対面のあたしをさらりとバーの中に案内する北斗は、なんかもうかっこよくて、胸がキュンとした。

 あたしはとても単純なのだ。

「上着、預かるよ」

「え……?」

「置き場に困るでしょ?裏でぼくが預かっておくから」

「あ、あぁはい!ありがとうございます!」

 あたしは、急いで着ていたジャケットを脱ごうとすると、なんと、北斗が手を貸して脱がしてくれた。

 男の人にそんなことをされるとドキドキしてしまう。

 北斗はそのままあたしのジャケットを置きに姿を消した。

 わざわざあたしの私物を預かってくれるなんて、北斗はなんて優しい人なのだろう。

 このイベントへも無料で招待してもらっているわけで、あたしは少しだけ舞い上がりそうになった。

「おまたせ。あっちで飲む?」

 手ぶらで戻って来た北斗は、あたしをフロアの奥にあるラウンジに案内した。

 ラウンジの左側にはバーカウンターがあって、右側にはソファーとテーブルのセットがいくつかある。