元カレバンドDX

 もうこの際、オーディションの合否なんてどうでもよかった。

 憧れの北斗さんが、あたしのデモ音源を聴いてくださり、しかもその歌声を褒めてくださって、さらにイベントにまで誘ってくださっているのだ。

(連絡先まで教えてくれるなんて……)

 仕事用かもしれないが、北斗の携帯番号やアドレスが手に入るなんて、一部のファンから恨まれそうだ。

 あたしはその一部のファンである風太に報告のLINEをした。

【なんか、オーディションの結果はよくわかんないけど、とりあえず明後日の北斗さんのイベントに行くことになったよー!!!しかも、北斗さんの連絡先をゲット!!】

 興奮冷めやらぬまま、あたしは北斗の音楽を部屋に流した。

(まさか、あの北斗さんにお会いできるなんて~~~!!!!)

 北斗の音楽に合わせて、小躍りを始めるあたし。

 それは、あたしにとって喜びを表現した舞いだ。

「は……!!」