しかし、「“元カノ”に似ている新しく入った派遣の子が好きだから……」という理由で、あたしを振った充晴が、あの女性メンバーと付き合うことにしたのは、未だに謎である。

 トイレを済ませ、手を洗っていると、キーボードの北斗(ほくと)が鏡越しに見えた。

「北斗さんもトイレ?」

 後ろに振り向き、声を掛ける。

「ん?いや、電話だよ」

 長身の北斗は、短髪のシルバーアッシュの髪に手をやって、にっこりと笑顔を見せた。

 ただでさえ目の細い彼は、笑うとさらに目が細くなる。

 ミステリアスで不思議なオーラに包まれた彼は、なにがあってもやはりあたしの憧れの存在だ。

 そう、なにがあってもね。

「もしかして国際電話ですか~?」

 あたしがにやりと微笑むと、北斗も白い歯を見せて笑った。