元カレバンドDX

 あたしは、急いで楽屋用の教室に行き、スマホを手にすると彼のもとへ戻った。

「おまたせしました!えっと……じゃあフルフルで交換します?」

「うん、そうだね」

 こうしてあたしたちのLINEは繋がった。

 彼がやけに嬉しそうにしているのは、あたしの見間違いなのだろうか。

 あたしは思い込むタイプなんだから、勘違いさせられても困るんだけれど……。

「えっと、じゃあLINEしても平気?彼氏とか怒らない?」

「へ!?」

 彼のさわやかすぎる笑顔と、彼が繰り広げる少女コミック原作の映画のような展開に、あたしの中のどこかが反応した。

「あ……彼氏とかいないんで……大丈夫です」

 “恋”は唐突に始まるものなのかもしれない。

「本当に?ラッキー!じゃあ既読スルーしないでね!」

 そんな予感が頭の中をぐるぐると駆け巡る。

 イケメン読者モデルのような彼は、
 
 後ろ向きで手を振りながら帰って行った。

「スバル……くんか……」

 鼓動が少しだけ速くなって、頬が少しだけ赤くなって、手には少しだけ汗をかいていた。

 これを総合して判断すると、やはりこの出会いは「恋のはじまり」のような気がしてならない。

 だからあたしは、その場で10分間も立ち尽くしてしまったのだ。