大きな口にオムライスを運びながら、スバルや風太の顔を思い出した。

「まーた、そんなかっこいいこと言っちゃっって!」

「いいじゃん、別にー!!」

「まぁ、でも陽愛はさ……」

「今度はなによ」

 あたしはまたふくれっ面になった。

「陽愛は、振られるたびに成長していってる気はするよ。なんだか、どんどんたくましくなっていくし」

「出た!!ただ者じゃない発言!!」

「なにそれ!?」

 小巻は、眉をつり上げながらも続けた。

「なんかさ、失恋するたびに磨かれていく感じ?普通、簡単に浮気を許そうなんて思えないよ。気づいたら、自分もバンド始めちゃってるしね」

「本当に!?それ超うれしーけど、何にもでないよ!?」

 今度は笑顔で小巻の顔をのぞく。

「なーんだ。言って損した!デザートに杏仁プリンおごってもらおうと思ったのに~」

「えぇ!?どっち!?」

 小巻はまた「冗談冗談」と笑いながら、「本当だよ」と付け加えた。

「わかった!杏仁プリンおごるわ!!」

 言ってあたしが目を光らせると、小巻はにっこりとしながら最後のサバを口に入れた。

 そんなあたしたちの冒険は、まだ始まったばかり。

 Are you ready?準備はいい?

 恋愛は自分を磨く果てしない冒険でもあるのだ。


【on drums 風太-END】