一番近くて 手の届かない君へ

水商売をしていれば女の方から誘われる事は度々ある。


決して珍しい事ではない。


でもそういう時は大抵ホテルに行く。


もちろん女の奢りで。


自分から金払ってまでホテルに行くほど女に不自由はしていない。


でも、いきなり自分の部屋へ誘うなんて、俺は少し驚いた。


「お客様、酔っているんですか?」


と俺はすまして聞いてみた。


沙耶はコクンとカクテルを一口飲んで


「ホテルで一夜限りなんて殺伐としてない?」


と試すような言い方で俺を見た。


俺は沙耶をまじまじと見た。


色白でスレンダー美人。


少し大きな目にぽってりとした唇。


清楚でいて色っぽい。


正直俺のタイプに当てはまる。


俺の欲望に少しだけ火がついてきた。


「部屋なんかに呼んだら何回も通っちゃうかもしれませんよ?」


と俺は聞いた。


沙耶はコクンとカクテルを飲み干した。


「君はそんな男の子じゃないわ」


とグラスを置いた。


(男の子?)


俺はガキ扱いされたみたいで少しムッときた。


その様子を見て沙耶はクスっと笑った。


「何時にあがるの?」


と聞いて来た。


まるで交渉成立したような言い方だった。


それはそれでのってみようじゃないか、と俺は思い


「お客様がお帰りになればあがれます」


と答えた。



時刻は真夜中の3時過ぎ。


残る客は数少ない。


店にはマスターともう一人バーテンダーがいる。


言えばきっと上がれるだろう。



「○○○にあるレイクマンションの1105号室」


と沙耶は潤んだ瞳で囁いた。


「タクシーで7分位で着くわ」


(○○○のレイクマンション1105号室・・)


と俺は頭の中で復唱して頷いた。





そんな事があったのはもう半年以上も前の事だった。