一番近くて 手の届かない君へ

タクシーは高層マンションの前に止まった。


ドアが開いてタクシーを降りると冷たい風が頬を刺すように吹き付けた。


まなみを見ると寒そうに肩をすくめている。


オートロックを解除してエントランスを通ればコンセルジュがカウンターの中に立っている。


「こんばんは。3015室の梶原さんの部屋に行きます」


と俺がコンセルジュに向かって言うと、


「はい、亮様ですね、梶原様から承っております。どうそ」


と笑顔で答えてくれた。


その様子をまなみはキョトンした様子で見ていた。


俺はクスっと笑って


「あの直通のエレベーターで行きます。


 オーナーは最上階に住んでるんで」


と言うと、まなみは黙って頷いた。


エレベーターの中でも俺たちは無言だった。


普通の女の子なら俺はペラペラと話しかけるけど、


まなみはどうやら訳ありっぽいから黙っていた。



エレベーターの数字がどんどん上昇していく。


ポーンと音がして扉が開けば赤い絨毯を敷き詰められ廊下がある。


俺はスタスタ歩き、オーナーの部屋の前で止まりカードキーをさした。


ロックは解除され自動的にドアが開く。


俺は後ろを振り返ってまなみに入るように促した。


まなみはしばし動かなかったが、覚悟を決めたように顔を上げ玄関に入った。


どういう事情かわからないけど、オーナーがわざわざこの豪華なゲスト用の


マンションへ呼んだんだ。


(きっと、相当稼げる女になるんだろうな)


と思いながら玄関に入ると、


ガチャンと重々しい音を立ててドアは閉まった。