一番近くて 手の届かない君へ

お風呂から出て亜里沙は部屋着を着て髪の毛を乾かし始めた。


肩下まである艶のある長い髪。


シャツとズボンをはいた俺は亜里沙の手にあるドライヤーを取った。


「乾かしてやるよ」


と言い熱風を亜里沙の髪に指を通しながら当てた。


サラサラとした綺麗な髪が俺は好きだ。



「ん~・・何から何までありがとう」


と亜里沙は目を瞑って答えた。


「腹減ったな。材料なんかある?」


と俺はドライヤーを当てながら聞いた。


「作ってくれるのー?」


「ああ、材料があればね」


「うーん・・やっぱり私、溺愛されてるみたい・・」


と亜里沙は気持ち良さそうに言った。




(溺愛・・ね。

 俺はただこういった事に慣れてるだけ。


 俺にとっては当たり前な行為なんだけど)


といつも思う。


料理作って、お風呂に入れて体を洗ってやる・・。


俺がガキの頃から好きだったスキンシップ。




母親が何も出来なくなって、俺がご飯を作ったりお風呂に入れていた。


嫌じゃなかった。


むしろ嬉しかった。


あの頃の母親は俺がいないとダメだった。



<俺がいないとダメな女>



このへんな”理想”が俺を支配していた。



依存されているだけなのに”愛情”と錯覚して俺は喜んでいたんだ。


こんな滑稽な事、とっくにわかっていた。


だから広く浅くが俺のモットーになった。



自分にとっても好きなスキンシップをして、優しくする。


そうしているうちに俺は<溺愛王子>と呼ばれるようになっていた。



ほんっと笑える。


そして、自分でも変な性分だと思う。


とにかく気が付いたら”愛”ってやつがわからなくなっていた。



ただ、いつの頃からか女の間を渡り鳥のように飛んでいた・・。