それは、肌寒さが増した11月半ば頃の事だった。
イギリスが、風邪をひいたというのだ。
7月ならまだ分かるがなぜ今になって、と考えるより先に俺はイギリスの家へと向かった。

木枯らしの吹く道を、薔薇の垣根が見えるまで歩く。
変わらず美しい手入れの行き届いた庭は、今は主の病によって少しだけ元気がなくなっている様だった。
ドアベルをリリン、リリンと三回鳴らす。
絞り出す様に聞こえてきた柄にもなくしおらしい声は、イギリスが本当に弱っている事を示していた。
ドアを開け、そのままイギリスの眠る寝室へと進む。
「イギ……リス…?」
ベッドの中央で背を丸めて微かに震えるそれを見て、初めて実感が湧いた。
同時に怖くなった。このままこいつは消えてしまうのではないだろうか_そんな事を考えていると、イギリスはこちらにその手を伸ばした。
「フランス……」
「な、にやってんだよお前…だからあんまり仕事しすぎんなって、あれほど」
「…本当に、来てくれるとは思わなかった」
そのまま手を引かれて抱え込まれる。
確かに動いている心臓の鼓動が、少しだけ俺を安心させた。
「あったけえ…」
「…お前、寂しかったの」
「そう…なのかもな」
「なら、もう少しだけここにいてあげる」
そう呟いた俺はイギリスの頭を撫で、背なに手を回して抱き締めた。
昔、小さかったこいつにしてあげた様に。
今はもう随分でかくなってしまったけれど、こうしているとまるで昔と変わらないような錯覚さえ覚える。
「フランス……」
「なぁに、イギリス」
「…ベゼ、したい」
熱に浮かされたあやふやな声でイギリスが口にしたそれは、冗談なのか、本気なのか。
真意を図りかねる俺の唇に、ふわりと口づける。温かい感触が、じわじわと侵食を開始した。
「ふっ……」
「ぅ…んっ、イギ…」
「は…、もっと、してもいいか?」
「………うん」
キスが孕んだ熱量にほだされて、イギリスの頭をかき抱く。
どろどろに溶けてしまいそうな思考は、ついに考える事を放棄した。
「ん…ん、はぁ……っ」
「ふ、ん……フラ、ン」
「あ、いぎり…は、あ、あぁ」
もっと、もっと欲しい。
本能が、お互いを求めている。
そう感じずにはいられないほど、熱は高まり昂っていた。
もう恋人同士ではないことも、世界一大嫌いな腐れ縁であることも関係なかった。
イギリスが俺を必要としている、その事実に体は勝手に上り詰めて行く。
「い、ぎりす…ぁ、あ」
「はっ…フラン、フランスっ…!」
「あ、あはっ……は、ふ」
切ない声で名前を呼ばれ、脳天から甘い電流が走る。
「あちィ……」
「ひ…と、溶け、るっ…」
触れられた所が、熱くて堪らない。
熱を帯びたその手に蕩かされてゆく。
「はぁ…っう、んん……!」
シャツの中に進入し、脇腹をなぞる指が下肢の中心にあるそれに触れた時には、もうどうしようもなくなっていた。
「は、ひっ…あは、あ、ああっ……!」
頭が真っ白になり、火花が弾ける。
前をくつろげることもないまま、俺は快感の奔流に呑まれていた。
「もう……っいく、のか」
「あ、ああ、ん…!」
這わされた手の中で、強烈な絶頂感が襲いかかる。
「っ、あ____!」
気付けば、ひくひくと身体を震わせながら果てていた。
「っは、あぁ……」