「うん,お話できるよ。」


鈴音の頭を撫でて,そう返事をし久世さんに向き直る。



「今日はかまってあげて?」


「ですが…」


「昔の事なら忘れてほしい。
 もう誰も悲しまなくていいの。」


久世さんの瞳を真っすぐ見つめ,私は久世さんの言葉を待った。



「…あの事故は私の責任なんです。
 千草様や蓮様,優様から憂様を奪ったのです。」


ぐっと握りこぶしを作り,苦しそうな久世さんの表情に,申し訳なさと悔しさが胸に溢れる。



「あの事故は誰のせいでもないの。
 久世さんのせいでも,私のせいでも,譲のせいでもない。
 何かが悪かったというなら運が悪かったのよ。」


私と譲が喧嘩なんかしなかったら…って何度も思って自分を責めた。


優と一緒にいてあげられなくて悔しかった。


そんな思いをする人はもういなくていいの。


そろそろ開放されなきゃ。


そして止まったままの時間を再び動かそう。