あなたが私に堕ちるまで【完】


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「ねえ、先生」

「用を言ってください」



もう数分ばかりこのやり取り。

私が攻めの、先生との攻防戦。



放課後。
帰りのホームルームが終わり、なごみに挨拶をして教室を飛び出した私が向かったのは国語準備室。


そこに、高来先生がいるから。


国語準備室は4階の一番端にある、あまり人の寄りつかない部屋。

その理由は部屋が薄暗い、夏は暑く冬は寒いからなんだとか。高来先生以外の国語教諭だってそんな理由でいない。


でも先生はひとり、そんなところにいる。

一回、聞いたことがある。

『なんでここにいるの?』って。

先生はどこか虚ろな目をして『なにも考えなくてすむからです』って言っていた。



「だから、私先生のこと好きなの」

「それは用ではありません。帰ってください」

「気持ちを伝えるっていう立派な用だよ!」



まったく……先生ったら何も分かってないんだから。


たかが気持ち、されど気持ち。


先生はそろそろいい年なのに彼女の一人や二人もいないって噂。まあ、あくまで噂で、彼女が二人もいたら修羅場だ。



それに先生のことを好きな私としては彼女がいなくて嬉しい。