side、優





目の前で歌うのは、俺が待ちこがれていた子。




ただ、彼女はいつもと違った。 緊張しているせいか、肩に力が入っている。声が震えている。




「これじゃあ、番組が成り立たない。」


周りのスタッフが囁き始めた。


「桜井くん、君の考えはわかった。でも、この子の歌は、テレビには流せない。」

「ー…。彼女は、こんなもんじゃありません…!」



俺は、人混みをかき分けてダッシュで車に戻った。
女が騒いでいるが、今の俺には何も入ってこなかった。