授業を受けにきた学生が集まる中、俺は後ろから二列目の空いてる席へと腰を下ろした。
ハァー……間に合って一安心。
亜希に言われた通り、俺は遅刻の常習犯だったりする。
それにしても今日の嘘は失敗だった。
あんなとこで亜希に会うと思ってなかったし、言い訳なんかもちろん考えてなかった。
でも、つい呼び止めてしまった。
馬鹿だな…俺って……。
『浪人の次は留年する気?』
なんて言われた。
それって、結構きつい。いや、大分。
それだけは絶対に困る。
俺は亜希や秀と違って、ストレートで大学に入れなかった。
二人が合格して、俺は見事に不合格。
日々の努力が足りず……。
とか言ったら聞こえはいいけど、要するに馬鹿だったわけだ。
一年前の春――。
自分だけ進学が決まらなかったことを、俺は悔やんでも悔やみきれなかった。
そのあとの一年間、狂ったように勉強をした。
多分、今までの人生の中で一番机に向かったと思う。
それでやっと、今年から大学生になったわけだ。
つまり、俺は一年で二人はもう二年になっている。
かなり出遅れたってかんじ……。
高校時代、俺は勉強よりも部活のバスケに打ち込んでいた。
そのおかげで、レギュラーを軽々取れるくらいの実力はあった。
が、バスケは俺を大学には行かせてくれなかった。
薄情なもんだ……。
だから、とにかく絶対に留年なんかできない。
一息つくと、さっき亜希に手渡された中身が気になり始めた。
亜希の好きなキャラクターのレターセットの封筒。
『授業が終わってから』とか亜希は言ったけど、俺の性格上それは絶対に無理。
一回気になり始めると、他のことに集中できなくなる性分だったりする。
亜希の言葉を無視し、俺は中身を取り出した。