扉を開けると、亜希の横には良平がいた。
ベッドに腰掛けた亜希が、楽しそうに笑って良平を見上げている。
「……秀」
良平はどこか驚いたようなリアクションをした。
振り向いた良平に反応して、亜希もこっちに目を向ける。
亜希に会うのは、あの事故の日から二度目。
三人で顔を合わせたのはあの日以来だった。
「しゅう……くん?」
ぎこちなく口にされた、俺の名前。
記憶を失って二度目。
仕方ないのかもしれない。
俺はあれ以来、若干ずつでも前向きになってきていると自分で思っている。
「何か久しぶりじゃね? 三人揃っちゃうとか」
良平は相変わらずの調子のようだ。
「そうだな」
「ってかさ、お前が通ってやるべきだろ? なぁ? 亜希」
亜希の記憶が無いのをいいことに、良平はそんな冷やかしみたいな言い方をする。
何もわからない亜希は、良平と俺を交互に見て顔をほころばせた。
亜希がこんなことにならなければ、良平は間違ってもこの手の冷やかしはしない。
禁句。暗黙の了解。
互いの気持ちはそうやって守られてきたからだ。
「……なぁ、良平」
けたけた笑っている良平に、俺はある話をしようと切り出した。
会って話さないといけない。
そう思っていた重大な話があった。