夜の海は真っ暗で、遠くにぼんやりと明かりを灯す漁船が何隻か浮かんでいる。
わたしは裸足になって砂浜を駆けていった。
秀を追い抜かして、先に砂浜に座り込んでいた良ちゃんも通りすぎて、波のすぐ近くまで走る。
さっきより波の音が近くに迫り、目を閉じて潮風を吸い込んだ。
波はずっと、同じ音を繰り返してる。
行ったり来たり、止まることは絶対にない。
変わらない……。
「あー、やっぱ海っていいよな」
さっき追い抜かした良ちゃんが真横にやってくる。
秀も後から来て、良ちゃんが立つ横に腰を下ろした。
「……変わらないね、景色」
去年来た時と全く変わらない気がする。
絶え間なく打ち寄せる波を見ていたら、突然大声を出してみたくなった。
「今年も来たよぉー!」
思いっきり叫んでみると、何だか身体中がスーッとして気持ちよくなった。
「またー、来年も来るからねー!」
「亜希が忘れなかったらなー!」
「えっ?! ちょっと何それぇ?!」
横で叫んだ良ちゃんを見上げると、悪ガキみたいに笑ってこっちを見ていた。
「だからっ、良ちゃんに言われたくない!」
「どうせあれだろ?」
「若年性アルツハイマー」
いい突っ込みをしてくれた秀を見ると、わたしに向かってにこっと笑いかけてくれた。
「おい、秀、お前まで言うなよ」
「ナイス突っ込み!」
「……お前なぁー」
こうやってずっと、
一緒にいたい……。
波みたいに絶え間なく……
三人で笑って……三人で騒いで……。
絶対に消えたりしない……
波みたいに……。
どんなときも、わたしは二人と一緒にいたい。
また来年も……この場所に三人で来ようね?
絶対に……。
わたしの幸せは…
二人といられることだから……。