取り出したスマホには『佐伯 良平』の文字。
「はーい…もしもし?」
『おう、オレオレ』
オレオレって……。
良ちゃんの軽い口調で、考え込んでいた頭はすっかり空になる。
「なに、またイタ電?」
この前の意味不明な電話を思い出してそう言ってみた。
そういえば……あの電話はほんとに何だったわけ?
『はぁ? イタ電なんかするわけねーし』
はー? この前したじゃん……。
意味不明電話。
強気に言われムッとくる。
「じゃあアレか、一世風靡したオレオレ詐欺」
『ってかさぁ、イタ電でも詐欺でもねーし!』
一瞬言葉を詰まらせたみたいだけど、良ちゃんは負けじと言い返してくる。
今日はなかなか手強い、かも。
「一度あることは二度あるって言うじゃん?」
『それ言うなら、二度あることは三度ある。だろ? 間違ってるし』
うっわー、むかつく……。
「あっそ、じゃあ三度目のイタ電もあるってことか。良平の番号、着拒しよっかな」
『……あのなぁ、何なんだよいきなり』
「はいはい、で? 何の用なの? っていうか、いま何してんの?」
うだうだ続くきりのなさそうな会話に話題を変える。
電話の向こうは全く音が無かった。
『え、いま秀んちだけど』
――ドキッ…。
そう言われて、わたしの心臓はビクンと跳ね上がる。
良ちゃんをからかって忘れていた、秀のことが蘇った。