体育館を出て、門を出て、わたしはひたすら歩いてく。
何度も立ち止まりそうになった。
振り返りたくなった。
走りたくなった。
引き返したくなった。
でも、歩いてる。
逆らうように歩き続けてる。
どんどん遠ざかる母校とわたしの距離。
良ちゃんとの距離も……
離れてく……。
ただの距離だけじゃない気がしてる。
本当の……良ちゃんとわたしの距離。
それも離れていく気がしてる。
そう思ったら、わたしの足は勝手に止まった。
地面ばかり見て歩いてた。
顔を上げると、もう家のすぐそばまで帰って来ていた。
昔、良ちゃんとよく遊んだ公園。
その真ん前に立っていた。
何かに突き動かされるように中に入って行く。
公園内には静かな時間が流れていた。
子どもも大人も、誰もいなかった。
木枯らしが吹いて、細かい砂利と白いビニール袋が円を描いて舞っている。
わたしはそのまま四つ吊られてるブランコまで歩いて行った。
一番端のブランコに座ってみる。
すごく懐かしく感じた。
最後に座ったのはいつだっけ?
あの頃は足がぷらぷら浮いたのに、今はしっかり地に足がつく。
それだけ、大人になったってことなんだよね……。
そんな実感ができるってこと、“懐かしい”って思えること、そんな当たり前の感覚ですら、今のわたしにはありがたく感じられている。