「これ……どうしたの?」



お母さんが渡してくれたのは、亜希のスマートフォンだった。



なくしちゃったと思ってたのに……。



「さっき、良平くんが来たのよ。それ渡しに」


「……良平くんが?」


「亜希に会いたいって言ってたけど、風邪移しちゃったら悪いから、お母さんが亜希の代わりにありがとうって言っておいた。熱があるって言ったら、すごく心配してたわ」


「そっか……」



良平くんには……会いたくない。



ううん……


会いたいけど……会えない。



亜希のこと、心配してくれてんだ……。




「亜希、良平くんと喧嘩でもしたの?」


「え? ……どうして?」



お母さんが訊いたことがわからない。



喧嘩は……してないと思う……。



「何となくそんな気がしただけよ」



お母さんはにこっと笑って立ち上がった。



「電話も、かかってきてたみたいよ? 良平くんが持っていてくれてた間。秀くんから」



秀くんから……電話?



「寝てなさい。また後で夕飯持ってくるから」



お母さんはそう言って部屋から出て行った。