「良平が? そんな奴じゃないよ、アイツは」



彼女のその言葉に、俺はとっさに否定していた。



本命は、亜希。

それは間違いなかった。


でも、彼女との付き合いだって“遊び”ではなかった気がする。


良平なりに疑問を持って、考えてたって俺には思える。


優柔不断な奴だけど、良平は女遊びをするような軽い奴じゃない。



俺の否定に、彼女は目尻を下げて少し救われたように笑っていた。



「この間、見ちゃいました……あの二人、もう付き合ってるんですか?」



え?


付き……合う?



「……何で?」


「仲良さそうに……手、繋いで歩いてたから」



語尾が溜め息混じりに彼女は答えた。


「そっか……」



幼なじみでやたら仲の良い二人だけに、それだけで判断するのもどうかと思えた。


が、今は状況が違う。


遅かれ早かれ、そんな展開は予想してた。


だから表面上、俺はそこまで驚きはしなかった。



ただ、彼女の言うことを想像すれば、見たくないものだった。



亜希と良平が付き合う?



それは未知の世界だった。



「私、納得できないです……記憶、なくなったっていっても」


「……知ってたんだ?」



彼女までそのことを知ってたらしく、俺は驚きつつさり気なく答えた。


亜希のことは、もしかしたらかなり広まってるのかもしれない。



「亜希先輩、前田先輩のこと好きだったんですよ? そういうことも全部……忘れちゃうんですかね?」