翌日。
今日も日差しが眩しい晴れの天気だった。
授業も終わり、俺はとっとと帰ろうとキャンパスを歩いていた。
そんなとき、コツコツとヒールの音が自分に近付いてくるのに気付いた。
振り返ろうとしたそのとき、左腕に細い指が絡み付いた。
「やっと追い付いた!」
少し息を切らせながら嬉しそうにぴったりくっつく。
尋乃だった。
「おっ、びっくりした……今帰り?」
笑って訊いてみたものの、自覚できるくらい薄っぺらい笑みが浮かぶ。
尋乃とは今日は同じ授業じゃなかった。
「はい。先輩もですか?」
「おぅ、今日は二限だけだったから」
絡まる腕に妙に違和感を感じる。
どうして付き合ってるんだ?
未だにそう思うことがふとした瞬間にある。
「昨日、亜希先輩に電話しちゃいました」
「えっ? 亜希?」
「ほら、昨日前田先輩が言ってたじゃないですか? 亜希先輩がサークル入ってるって。だから、訊いてみようと思って」
「ああ、何か言ってたな」
「あー、でも……何か悪いことしちゃいましたよ」
「……悪いこと?」
そのフレーズに疑問符が浮かぶ。
一人気まずそうな顔をする尋乃の顔を見下ろし、俺は首を傾げてみた。
「あ、はい。亜希先輩、サークル辞めるかもしれないらしいです」
「え?」
「サークルの先輩ですよ! 顔合わせたくないみたいですね」
……先輩?
顔、合わせたくない?
……何の話だ?
「まぁ、別れた人がいたら、そりゃ会うのとか気まずいですよね?」
……は?
「……別れた?」
「えっ、良平先輩……亜希先輩から聞いてないですか?」
俺の顔を見上げ、途端に困り顔になっていく尋乃の顔。
真顔のままその目をじっと見つめると、尋乃は顔をひきつらせて作り笑いを浮かべた。
「ほら、サークルの先輩と……付き合ってたっていう話ですよ?」
……は?
尋乃の声が頭の中をぐるぐる回る。
話の内容を理解したと同時、次々といろんなことが頭を巡った。
亜希が自分に何も話してないこと。
付き合った男がいたこと。
自分が何も知らなかったこと。
頭が一気に混乱の渦に飲み込まれていった。