「どーぞ」


自分の部屋のドアを開けて、亜希は親切に俺を招く。


またまた今までに無い丁寧な扱いを受けてる俺……。


「お邪魔しまっす」


二回目の『お邪魔します』を言って中に入った。



部屋の中はレースのカーテンが引かれ、直射日光が遮られていた。


明るくもなく暗くもない、ちょうどいい感じ。


亜希は静かにドアを閉めると、ベッドに腰掛けて読んでいたと思われる漫画本をめくり始めた。


俺はフラフラと部屋を一回りしてからいつもの定位置に腰を下ろす。


いつもの定位置。

亜希が今座ってるベッドの斜め前で、出窓の真下。


ドレッサーとベッドに挟まれた微妙な空間。


それが亜希の部屋での俺の定位置だったりする。


そこにすっぽりはまってるのが何か落ち着く。



「……質問していいですか?」



しばらくして漫画をパタンと閉じた亜希は、改まった顔をして俺を見ていた。


くっきりした黒目が、じぃっとこっちに向けられている。



な、何か……不意打ちをくらった気分。



あ、あのぉ……

その目、反則っしょ?



「……な、何スか?」



ぎこちなく、しかも体育会系敬語なんかで返事してしまった。