秋晴れのキャンパスの片隅で煙草の火をつける。



何回、このノート開いてんだか……。



字も文も、かなり書けるようになったんだな。


そう思いながら俺はノートを閉じた。



でも本当は、この内容のせいで何度もノートを開いてた。



亜希を連れて原宿に行った帰り、送って行った俺に渡された交換日記。


嬉しそうに亜希が渡してきた。


どうリアクションとったらいいのかわからなかった。


良平が好きだという亜希に、自分はどうしたらいいのか?


わからなかった。



須田の出来事があってから、亜希の気持ちに何かがあった。


俺にはそれがすぐわかった。


記憶のない亜希には、何もかもが初めての気持ちなのかもしれない。



でも、記憶を失う前……


亜希の気持ちは確かに自分にあった。



『余裕かましてたら、また他に持ってかれっぞ』



いつか、良平に言われた言葉が頭に過る。



“失笑”

まさにそんな静かな笑いが出た。