学生の話し声が飛びかう中、授業が終わった俺は図書館へと急いでいた。
かなり早歩き。
やっぱり、授業中も亜希が気になって駄目だった。
まぁ、いつも最初から最後まで集中してるわけじゃないけど、今日は余計聞けてなかった。
当たり前なんだけど……。
こんなことなら、やっぱりサボればよかったなんて今更思う。
でも秀にあんな嫌味を言われたら、出ないわけにはいかなかった。
学生証を見せて中に入る。
来たときと何ら変わらない雰囲気にホッとした。
規則的に並べられた本棚を抜けて、亜希のいた場所へと足を運ぶ。
ただっ広い自習スペースに出きったとき、目に入ったのは黙々と机に向かう四、五人の学生だけだった。
さっきと変わらないメンツな気がする。
でも……亜希がいない。
亜希がいた場所まで行ってみると、バッグと色ペン二本が机の上に残っているだけだった。
姿は見当たらない。
「ったく……」
舌打ちなんだか溜め息なんだか、よくわからないものが漏れる。
ちゃんと待ってろって言ったのに……。
そう思いながら俺は図書館内を歩き回り始めた。
このどっかにいる……はず。
そう思いながら、本棚を一列ずつ捜して歩く。
でも、
おかしい……。
……見当たらない。
行き違ってるのかと思って何度も同じ所を歩いてみるけど、本棚の迷路の中に亜希の姿は見当たらなかった。
「どこ行ったんだよっ」
徐々に焦りが増してくる。
俺は亜希の荷物が置かれた机まで戻り、近くに座っていた眼鏡の男に思わず声を掛けた。