亜希は怖くて、自分の足ばっかり見てた。



この人……


本当に知らない。


でも、この人は亜希の名前も知ってるみたい。



忘れちゃった病気のせい?


だからわからないの?



「なぁ、亜希。今日さ、サークルのイベントやるんだよな。お前も行くだろ?」


「え? ……さーくる?」



何? それ……。



「そうそう。俺さ、今から行くけど……一緒に行かねぇ?」



行く?

どこに?


わからないよ……。



亜希は、良平くんと秀くんを待ってるんだもん。


ここで、ちゃんと待ってるんだもん。



そう約束したんだもん!




「亜希……ここで、良平くん待ってるから」


「……良平?」


「うん。ここにいないといけないから……」





待ってるんだもん……。





「あっ、良平な?」



え……?


この人……良平くんを知ってるの?



「そうそう、良平! あいつも後で来んだよ。だから、先行ってろって言われててさ」


「え? ……良平、くんが?」



良平くんの……お友達?


……なの?



「そうそう、だから行ってようぜ? な?」


その人はそう言って亜希の手を引っ張った。





良平くんのお友達……なんだよね?


良平くんも……来るんだよね?



それなら……大丈夫だよね?





手を引っ張られて、亜希はその人についていった。