鉄板の上で踊る鰹節。
亜希は顔を近付け、うごめく鰹節に不思議そうな眼差しを送っている。
「飯食いに行こうぜ」
という良平の一言で、ネイルサロンの帰りにお好み焼きを食べに来ている。
もちろん、今日の鉄板奉行は言いだしっぺの良平。
いつもは良平の不出来ぶりに亜希が見兼ねて代わり、そのうち亜希が飽きて、俺が仕方なく……。
といった感じ。
良平はお好み焼きのセンスが全く無い。
ひっくり返すときに必ずといっていい程の確率で崩す。
かと言って、もんじゃ焼きとなると絶対に主導権を握らせたくないとも思う。
これから口に入るものが、リバースしてきたものみたいに悲惨な姿になるからだ。
――ブッ…ブッ……。
そんなとき、テーブルの隅に置いておいた俺のスマホが鳴り始めた。
「おい、鳴ってるけど」
手を止め、良平が俺を見る。
しぶとく振動しているスマホにチラっと視線を送ったものの、俺は手にも取らず放置した。
「亜希もやりたい!」
ちょうどそんなタイミングで亜希が声を上げる。
震え続けるスマホに気を取られ、良平はそのまま亜希にバトンタッチしていた。
「……出ねぇの?」
「用が有ったら留守電に入れんだろ」
鳴り続けるスマホを無視してあっさり答える。
かけてくる奴の検討は大体ついている。
今出る必要もない。
「女だろ?」
探るように良平は言う。
目を向けなくても、バッチリ俺を見ているのがわかった。
「まったく、お前も隅に置けねぇよな? 相変わらず」
黙っていると、良平は勝手な確信と共にそんなことを言った。