「聞いてよ、宏樹がさ…。」 宏樹(ひろき)、というのは茜の彼氏だ。 「…そっか。 茜は悪くないよ。 ちゃんと話せば分かってもらえるよ。 大丈夫。 でも、ちゃんと思ってることは言わないとね。」 “なに考えているかわからない”というのが茜の悩みだった。 お互い仕事をしていて、隙間を見つけては会って。 お互い“寂しい”なんて言えない。 そんなときにすれ違ってしまうことほど辛いことはないのだ。