君しか見えなくて


トイレに入り

鏡を見るとカラオケの熱気で

色白のせいで赤くなりやすい顔が


明らかに赤くなっていて

部屋が暗くてよかった...と思った



あたしはポケットに入っていた


自前のリップを軽く付けて


戻ろうとしたら



すぐ目の前のベンチに凌くんが座っていた


長い足を伸ばして座っていて


あたしが近づくと

ちらっと下を向いていた顔を上げ


笑顔で立ち上がる


「...なんかあったの?」


何をするわけでもなく


ただベンチに座っていたから


単純に気になって聞くと


「待ってた」とサラッと言った



「えっ....誰を?」


「はるのこと待ってた」


"はる" 低くてかすれたその声で


名前を呼ばれドキッとした半面嬉しさで

体中がまた熱くなるのが分かった




「部屋狭くて暑いしさ、ここで少し話さね?」

「あっ..うん」



思わぬ提案に驚きを隠せないまま




あたしは凌くんがまた座ったから


一人分あけて隣に座った