君しか見えなくて



「じゃあ最後締めよろしく!」

ヒロくんがいたずらっぽく笑うと

隣の彼は「お前ふざけんなよー」と

笑いながらも


あたしの手からサっとマイクを取ると立ち上がった



一瞬、手が触れた


ていうかあたしマイク握りしめすぎてて

めっちゃ熱くなってるよね持ち手


うわぁ...恥ずかしい


なんて考えていると


「安達凌(あだち りょう)です。サッカー部ですよろしく」

彼は簡単に自己紹介を済ませた



「おいおいそれだけかよー」と

男子たちから野次が飛んでも「いいだろ」と笑っていた


よく笑う人なんだな....


凌くんって言うんだ


再び凌くんがソファに座ったから

隣で肩が触れただけでドキッとして


あたしは両手を膝の上で握った






それからはヒカルくんとかが盛り上げながら歌って

みんなでタンバリンたたいたりお菓子食べたり


大音量の薄暗い部屋の中で盛り上がっていた




しばらくしてトイレにあたしが立つと


凌くんはわざわざ立ち上がって

ドアを開けてくれたから


あたしは照れながら目も見れずに

ありがとっと小さくいって足早に部屋を出た