私はお兄ちゃんに抱きしめられる。


次の瞬間、体に強い衝動がくる。


薄らと目を開ける。


「お兄、ちゃん…」


目の前には血の海。


私の血…


じゃない…!


「お兄ちゃん!?」


私は上半身だけ体を起こす。


お兄ちゃんの頭からは赤黒い液体。


そしてお兄ちゃんの甘い香りに混ざった血


なまぐさい香り。


吐き気が襲う。でも必死にお兄ちゃんを起


こす。


「やだ…起きて!お兄ちゃん!」


「羽、咲…っ」


「お兄ちゃん!」


「大丈夫…?」


「私より、お兄ちゃんが!」


「俺は大丈夫…」


「大丈夫じゃないよ!救急車!」


涙がにじむ。


「羽咲…」


「なに…お兄ちゃん。」


「笑って…」


「え…そんなの無理。」

「大丈夫、だか、ら…お願い…」


私は必死に笑顔を作る。


お兄ちゃんはポケットからチロルのを出


す。

「はい…あ〜ん。」


私は黙って口を開ける。


「はは…変な、顔。」


お兄ちゃんは、目を瞑る。


「やだ…置いてかないで…1人に…しないで…


よ…!」


もらったチョコは、


血の味しかしなかった。