「いや、だって、宇佐木さんは大人で、イケ


メンで、優しくて、でもパティシエで、お


兄ちゃんに似てて、私が甘いのがだめだか


らいつも気を使ってくれて、それでそれ


で…」


「好きになっちゃった?」


「うん…って違うっ!」


「あと気になってたんだけど。最近、羽咲、


甘い香りに過剰に反応しすぎてない?」


「え?」


「前の羽咲なら、すこしの甘い香りなら全然


耐えれたのに、宇佐木さんの前だとすぐに


目眩を起こすよね?」


「あ…」


確かに。最近よく貧血を起こしたり、めま


いや頭痛が多い。


それも、考えてみると宇佐木さんと一緒の


時が多い。


「それって、『意識してる』って事じゃな


い?」


「でも…」


「羽咲。恋って、理屈じゃないんだ。だか


ら、きっかけも自由なんだ。私だって、告


白してもらわなかったら、その人のことを


考えなかった。」


「…」


言葉が出ない。


「いいんじゃない。宇佐木さん。」


「…うん。」


好きだと気づいて、思う。


この間コーヒーを甘いと感じたこと。


あれはコーヒーが甘かったわけじゃない。


恋をしてたから、


ときめきがコーヒーを甘くしたんだ。


ヴァニラエッセンスの様に──────