1


「清水さーん、あたし、やっぱりダメー。怖い」


目の前には、背たけ以上にのびた茅の草むら。

あたしは立ちすくんで、一歩も足をふみだせない。


「なに言ってるのよ。怖いから効くんじゃない」


ふり向いた清水さんの顔は、暗くてよく見えない。でも、いらだっているのは確か。


「だってぇ」


あたしは泣きそうになる。

あたしたちは、市内のまん中を流れる山衣(やまい)川という川の河川敷に来ている。

西の空はまだ少し明るいけど、あたしたちのいるあたりは、ライトなしでは歩けない暗さだ。

近くを流れる川の水音が聞こえる。

空気がひんやりとして、ひどく淋しい。


「だってじゃないでしょ」


また清水さんにしかられた。「あんたには、もうこれくらいしか、やせる方法ないでしょ」


「う……」


そう言われると、ひとことも言いかえせないよ。