どのくらいの時間、彷徨い歩いていだろう。街に灯りが灯りはじめた頃、反対側の歩道を歩く隼翔を見つけた。
「あっ…」
だが、隼翔の隣には綺麗な女性が居た。私と違って背が高くスタイルの良い女(ひと)。ふたりが並んで歩いてると絵になり、すれ違う人達の視線は全てふたりに注がれる。
知らぬ間に頬を伝う冷たい物。それを拭うでも無く、人混みに紛れて消えて行く隼翔を見ていた。
ポケットの中で長い間震えている物を取り出せば、澪ちゃんからの着信を知らせていた。
「もしもし…」
『良かった…やっと繋がった。蒼海ちゃん今どこ?』
「分かんない…」
『分かんないって…蒼海ちゃん、何かあったの?迎えに行くから、そこから何が見える?』
今夜、母屋で一緒に食事をする事になっていた事を忘れていた。
「ううん…大丈夫。タクシー拾うから… 食事は断わっても良いかな?ごめんなさいってお父様達にも謝っておいてくれるかな?」
心配してくれてる澪ちゃんにごめんね、と謝って電話を切った。それから暫く歩いていたが、結局、私には行く宛もなくタクシーを拾い家に帰って来た。
門の前でタクシーを降り、母屋から漏れる暖かい灯りを見て、そのまま暗く誰も居ない離れへと入った。玄関を入り、有るはずのない隼翔の靴を探す。
そして電気は点けずにリビングに入り、私はソファーに腰を下ろした。

