幼馴染はどこまでも俺様過保護


リホームの終わった離れに移り住み、別々だった寝室も一緒になり、ふたりの新しい生活が始まった。

だが、隼翔はあの日以来、ベットは共にしても私に触れる事はしない。夜遅く帰って来て、私が目を覚ます時にはもうベットは冷たくなっている。

毎晩テーブルに用意してある食事は、今日も手を付けられていないまま置いてある。もうどのくらい話して居ないだろう。

本社へ顔を出せば隼翔の顔を見る事は出来る。なら、皆んなに差し入れでもして隼翔の顔を見にいこう。少しなら話す時間はあるかもしれない。

デパートでお菓子を買い本社へ顔を出した。だが、新店の準備で忙しい隼翔は私の姿など目に入らない様だ。久しぶりに見る隼翔は、少し頬がこけ痩せた様に見える。

食事はちゃんと食べているのだろうか…

買って来たマドレーヌを皆んなに配り、給湯室へお茶を入れに行くと廊下で隼翔が電話をしていた。

えっ…

電話をしている隼翔と目が合ったが、隼翔は明らかに私から目を背けた。

隼翔は私を避けてるの… 
夜遅く帰ってくるのは… 
朝、早くに出掛けるのは
仕事が忙しいからじゃないの…
私の顔が見たく無いから…
そうなの?

隼翔はそのまま社を出て行った。

その日、私は家に帰る気持ちになれなくて、街をブラブラと歩いていた。何を見るでも無くただ人の流れに逆らう様に歩いた。途中誰かに声をかけられた。

「ねぇ、一人?」

ひとり?…
私はまたひとりになるの?

「ねぇ何処行くの?」

私は何処へ向かってるんだろう?…

何も言わず遠くを見て歩いている私に、その人は「変なやつ」と言って私から離れて行った。