「我慢って…」

隼翔は呆れて言葉をとめた。

「ねぇ私が小さい頃隼翔の家に泊めて貰ったの覚えてる?」

「ああ…」

「あの頃の私はいつも泣いてたな…どうして私にはママが居ないのかって…友達にはみんな優しいママが居るのにって…」

本当に寂しくて…寂しくて…

「ひとりで寝てるとね夜中に目が覚めて泣いてたんだ…そして泣き疲れて寝るの…朝起きるとキクさんが私の腫れ上がった目を冷やしてくれるの…『可愛い顔が台無しですよ』って…」

キクさんはいつも優しかった。留守がちな父にかわって私の面倒をみてくれて居た。でも、夜だけはいつもひとりだった。いつか新しいママが出来た時に自分にベッタリでは私が困るだろうからって、だから、そこだけは甘えさせてくれなかった。

「隼翔のベットで隼翔と寝る時だけ朝までぐっすり眠れた。多分安心してたんだろうね?お兄ちゃんに守られてるって…」

「蒼海…」

「いつも守ってくれて有難う。ホント隼翔が連れて帰って来てくれなかったら私どうなってたんだろ…考えたら怖くなる。でも、もう大丈夫だからね?二度と合コンなんて行かないから心配しないで?これからはもっと気を付けて一人で生きて行けるように頑張るからね」

「………」

その時隼翔の表情が変わった事に私は気が付かなかった。

ピンポン!

その時チャイムがなった。

「きっと澪ちゃんだね?」

はーいと返事をして玄関のドアを開ける。

「蒼海ちゃんおはよう!大丈夫だった?」

「うん!初体験でけっこう辛かったけど、今は少し楽になったかな?」

「初体験!?おめでとう!良かったね❣」

ん?二日酔いが良かったの?

まぁ澪ちゃんは未成年でまだお酒飲めないからね?二日酔いに憧れるのかな?