シャットアウトされてしまえば、もう言うこともなくなる。
だから秘密主義の人とは仲良くなれない。
相手が秘密主義=仲良くなれない、それはもう等式に表せる。

『自我が形成されてる大学生同士、本当に分かり合えると思ってるの?』
とでも言いたげな態度。本当にそう思っていたとしたら、相当の捻くれ者だ。

それとも、考えすぎなんだろうか。
別に高梨くんはそこまでは考えていないかも。
「高梨くんは人見知りなの?」
「…うん、まあ」

こんなに恵まれていて、優秀な遺伝子を受け継いでいて、何をそんなに控えめになる必要があるのだろうか。
これほどになってくると自信過剰すぎて引かれるというのが王道パターンな気がするが。

「加西さん」

「はい?」

不意に名前を呼ばれると、何とも言えない気持ちになった。
たぶん、日の光に当たってキラキラしている高梨くんの透き通るような色素の薄い瞳と肌に、温い風で靡いた黒髪に、揺らいだのだ。


「2限、始まるよ」
「えっ」

時計を見ると2限まであと10分。そんなに時間が経っていたなんて信じられない。

「教えてくれてありがとう!じゃあまたね!」
高梨くんは「お疲れ」と一瞬頭を下げた。