穏やかな春の日差しが私たちを包んでいた。
私は、誰かにこちらから話をするのが本当は苦手なので、意外と無言が心地よく感じられた。
無理に話をするわけでもなく、ただただお互いがお互いを空気だとでも思っているかのようだった。

あまり高梨くんにいい印象は持っていなかったが、不思議と話しかけたいようなそんな気持ちになった。

「ねえ」
「何?」
「高梨くんってどんな人なの?」
「…は?」

ちゃんと話したことがなかったから、私の周りの誰かと高梨くんが友達とか、そういうこともなかったから、高梨くんのこと何も知らない。私は。

「隣の席になったし、知りたいなあって思って」

1年続けたバイトの効果もあって笑顔を保つのがうまくなってきたと思う。
笑顔で言った。

「…普通だよ」

…どこが。

「加西さんと俺は違うタイプの人間だと思うから加西さんには普通じゃなく見えるかもしんないけど、俺は自分のこと、ただの平凡でつまらない人間だと思ってるから、自分のこと話してても、面白く感じないし」

何それ。
ていうか初めてそんなに喋ってるの聞いた。