「夢香、この格好変?」
26歳のとなりを歩ける格好。
少なくとも女子高生には見えない、はず。
「なになに?もしかして、デート?」
夢香は興味津々にこちらを向いた。
「そうだけど、変、かな?」
「そっかー。変ではないよ。で、相手は誰なの??
コーディネートは相手に合わせなきゃ!」
なんだか夢香の方が乗り気だ。
「あー、こないだの合コンのときの。」
「もしかして、立花裕介さん?」
夢香は一緒に飲んだ人の名前は絶対に忘れない。
しかもフルネーム。
「そう。立花さん。」
「へぇ、連絡取ってんだ。」
「まあね。
でも春休み終わっちゃうから今日でさよならかな。」
さすがに社会人と女子高生はないよね…。
でも、1回だけならいいよね。
「そうなんだ。」
夢香は少し悩んだ素振りをした。
「立花さんかぁ。
なら髪上げていけば?」
夢香が自分の髪ゴムを渡してきた。
「なんで?」
「んー、なんとなく。
こないだ雑誌で、男性の好きなヘアスタイル特集、
ってやつやっててさ、ポニーテールが断トツだったから。」
相手に合わせる、か。
立花さんの好みとか分からないけど、
とりあえず夢香の言うことを聞こうと思った。
「ねぇ、結香、立花さんのこと本気?」
「今日のデート次第。
それに私は高校2年生だからね。」
とりあえず今日は私が高校生ということを伝えなくてはいけない。
髪をいつものポニーテールより少し高く結った。
準備が整ってカバンを持ったとき、外で車の音がした。

