気づいたら一時間近く私たちは階段に座っていた。
「…ということはさ、俺と付き合ってくれる、ってこと?」
「まだ立花さんのこと知らないです。」
「俺のこと知りたい?」
知りたい、と思った。
「……それなりには。」
「それなり、って。ひどいなぁ。俺脈なし?
遠回しに振られてる?」
「ち、違います。振るとかそういうのじゃなくて。
ほんとに立花さんのこと知らないから…。」
「じゃあこれから知っていけばいいよ。
じゃあまずは、俺のこと名前で呼んでよ。」
「え……。
なら私のこともちゃん付けはなしで。」
「やっぱり嫌だったんだ。ちゃん付け。」
「あの時はあの時です。呼び捨て、ですか?」
「うん。俺の名前分かる?」
裕介さん。
朝家を出る前に、夢香が言っていた。
「裕介、ですよね。」
「覚えてたんだ。」
覚えてたのは私じゃなくて夢香の方だけど。
「裕介さん。」
「……。」
珍しく立花さんの顔が赤くなった。
「こういうの照れるね。」
「結香顔赤い。」
「だめ、かな?俺、君のこと結構好きなんだけど。」
やっぱり大人だと思った。
高校生はそんなに簡単に、好き、なんていえない。

