奥本先生が、部屋を後にしてから、佐伯先生は私の体温のグラフが書いてある紙を見ていた。



「だいぶ上がったんだね。よく頑張ったね。」



佐伯先生に、そう言われ、



「寝てたので、私はそれほど頑張っていません。」




「熱が上がっている時はゆっくり休むことが治療なんだよ。それに、こんなに小さい身体で肺炎に立ち向かっていたんだよ。」





「そうですか…。そういえば先生。」




「ん?」




「仕事、休みですか?」




今日は平日で、学校も普通にあるはずだ。




「今日は、休みをいただいてね。だから、今日はそばにいるよ。」





「私は、1人でも大丈夫です。」




「まったく…。本当に素直じゃないな。」





「えっ?」



「そんな、悲しい顔されて放っておけるわけがないだろ。それに…。一番辛い時に誰かに傍にいてほしいって誰もが思うだろ。」



「いつそんな顔してました?私にとって、誰かに頼ることとか必要以上に私の心の中に土足で踏み入れてくるような人が一番嫌いなんです。」




だからお願い。必要以上に私に関わらないで。




きっと、この人に寄りかかってしまったらもう二度と私は人を信用できなくなるような気がした。



まあ…。元々私は人のことを信用していないけど。




母のことがあったばかりだから、優しい言葉なんて聞きたくなかった。




「なあ、紗彩ちゃん…。」




「何よ。」




「一体何があったんだ。」




「えっ?」




「何かあったから、そんな思いつめた表情しているんだろう?」