「なぁ、沙彩ちゃんさ。


沙彩ちゃんが言う赤の他人って、自分とは血の繋がりのない人間は全て他人だって決めつけてるだろ?」



「そんなの、当たり前でしょ。」



「でも、血が繋がってるからって必ずしも恵まれた環境にいるとかじゃないだろ。」




「何が言いたいの?」



「たとえ、血が繋がっていようと居心地が悪いならそれこそ他人に近いんじゃないのか?


いいか?血の繋がりなんかよりも大切なことは、どれだけ沙彩ちゃんのことを思って誰かが何かをしてくれるってことなんじゃないのか?
たとえ、血が繋がってないとしても沙彩ちゃんにとって少しでも温かいと感じる温もりに出会えたら、それは家族に近いようなものじゃないのかな。」




「意味…分かんないよ…」



気付いたら、私は震えていて目頭が熱くなっていた。



だって、それは私が1番聞きたくない言葉。



人の温もりってなに?



私にはそんなの無関係に感じていた。



それなのに気付けば、瞳からは涙が頬を伝って次から次へと溢れ出していた。




「少なくとも俺は、既に沙彩ちゃんのことを思ってこの学校に来た。沙彩ちゃんの負担を減らしたくて今の高校に来ることを決意したんだ。」




そう言ってから、先生は私を屋上側に戻し、柵を飛び越え先生も戻ってきた。



「…さようなら。」




先生に掴まれた手首を振り払い、私は先生にそう伝えた。



けど、私は再び先生に引き止められた。




「お前ってやつは。そんな大きな荷物持ってどこまで行くんだ。」


突然掴まれた手首。


私はこれ以上この人と関わるのが怖くて言葉よりも先に身体が反応して掴まれた手を急いで振り払った。




「触らないで。それに、私がどこへ行こうとあなたに関係ない。もう、放っておいて。お願いします。私に優しくしないで。」



先生に背を向けてから、私はある所へ足を運んだ。