「あんたさ、もうここから出てって。」




「え?」



「元はと言えば、ここは私が借りたアパートなのよ?生活費とかはあんたバイトしてるんだから平気だろ?だから、家出たら?」



「…お母さん?」




「ははは。何であんたにお母さんとか呼ばれないといけないわけ?ありえないから。あー、ほんと目障り。自分の荷物まとめてさっさと行って。」




「…。」


母は、私の表情も見ることなくタバコを吸っていた。



私は、自分の部屋に向かい荷物の整理を始めた。



近くで、母親は煙草を吸っている。



煙草の煙を直に浴びているけど、今はそんな苦しみより本当に母親に捨てられたことに対して苦しかった。



荷物をまとめてから、特に行く宛先もなくひたすら歩いていた。




何も考えたくない。




気付いたら、私はどこかの知らないビルの屋上にいた。




私は、柵を超え足を外に投げ出すように座っていた。




空を見上げ、ゆっくり流れていく雲を眺めていた。




すると、




「こんなところで何してんだよ。」




「あなたこそ。どうして。」




私に声をかけてきたのは、保健室の先生だった。




「うちの高校の制服を来ている女の子が、こんな危ない真似してるんだから、放っておくわけがないだろ。」




「赤の他人のくせに。」




「他人じゃない。」




「は?」




「こうして君に出会ったんだから、もう赤の他人じゃないだろ。」




「意味が分からない。」



そう答えた私の隣に、先生は腰をかけた。