「⋯⋯?」


低く、小さい声が聞こえた⋯⋯気がした。


いきなりの事にビックリして私はふと顔をあげる。


…今、なんて…?



その人は立ち止まってこちらを見た。


私たちがいた場所は玄関の前だった。




「あいつらが迷惑かけて悪かった⋯


本当そういうつもりはなかったんだけど、俺のせいで巻き込んでごめん。

バレないうちに帰りな。」




どういうこと⋯?


私を逃がすためにここまで連れてきたの⋯?



「俺の顔、思いっきり殴ってそこの玄関から出ていくんだ。


後は俺が適当に誤魔化しとく。」




「でっ⋯でも⋯。」

殴るって⋯⋯この人⋯⋯何もしてないのに




「いいから早く」



そう言って引っ張っていた私の手を離した。



「⋯⋯っ」



ごめんなさいっ!!





────バッシーン




私は思いっきり、彼の頬をビンタして玄関から走って出て行った。



ほんとに⋯⋯⋯ほんとに⋯⋯⋯




助けてくれた⋯⋯




私を連れ去った2人とは違って⋯⋯あの⋯ "鷹原" って呼ばれてた人は⋯⋯





ちゃんと、優しい人だった────