「ご、ごめんね!待たせちゃったね……」


「ううん?別にさっき来たとこ」



あたしが明るくふるまうと、なっちゃんは柔らかい笑顔を返してくれた。

彼の何気ない優しさに胸がギュッと締め付けられる。


なっちゃんのこーゆートコ、弱いんだよなぁ……



あたしは高鳴る鼓動を隠して、急ぎ足で彼の元まで行った。

そんなあたしを、なっちゃんは黙って見つめる。



「……座ろっか?」


「あ!う、うんッ‼」



……ヤバい。
ドキドキが止まらない……



『お前はまだ、悲しむほど努力してねぇ』

ふと蘇る琥侑の一言。



……頑張んなきゃ、決めたんだもん

頑張んなきゃ。



「……なっちゃん」


「ん?何~?」



なっちゃんは空を見上げたままあたしに答える。

……きっとゆっちと付き合う事になったからだろう。


見つめた横顔は口角は緩く上がっていて、いつもより随分楽しそう。



「あたしが友達にハブられた時、なっちゃん助けてくれたでしょ?」


「あー……そんなこともあったねぇ」



思い出すたび鼓動が速まる、彼の手の温度。

あの時の彼は悪いヤツからあたしを救ってくれた、正義の味方だった。



「あの時のなっちゃん、ヒーローみたいですっごく格好良かったよ‼」