「おい待て、琥侑‼」
さっきまでフリーズ状態だった俊太さんが琥侑の後を追う。
あたしたちのやり取りを心配そうに聞いていた理英子さんは慌てた様子で店内を見回す。
思いの外、大きくなっていたあたしたちの声を聞いて驚いている店内にいたお客さんに、理英子さんは深くお辞儀をした。
「申し訳ありません!申し訳ありません!」
……理英子さんの謝る声が、あたしの頭の中で何度も何度もこだました。
あの後、自分がどうやって帰ったかなんて全くわからない。
ただ、気づいたときには自分の布団の中にいて、涙で枕がびしょびしょになっていた。
……何の涙なんだろう。
別れを告げた後悔?
琥侑の悲しい顔を見たから?
……わかんない。
きっと全部だ。
今ある状況全部。
『何だよ……それ』
もっと自分が大人だったら……
もっと良い方法、見つけられたかもしれない。
琥侑にあんな表情、見せなくて済んだのかもしれない。
本当は、大好きだから大事に触れたいのに……あたしは傷つける事しかできない。
……ごめんね琥侑。
何度も何度も傷つけてホント……ごめんね。


