裏の方に通されたあたしは、俊太さんに視線を向ける。
いつもの俊太さんのやんわりした雰囲気とは違う、真面目な表情。
そんな俊太さんを少しだけ不思議に思いながら、あたしは小さく頷いた。
「ヒメちゃんは、琥侑が最近様子が可笑しいのを知っているよね」
「……はい」
あたしは俯きながら、小さく返事をした。
何となく、最初の一言で俊太さんの言いたい事がわかってしまった。
きっと……。
「留学を決める時だってそう。琥侑が悩む事って言ったら大抵ヒメちゃん絡みだ」
「…………」
「これから先、今以上に苦しい事ばかりで、きっと今以上に淋しかったり辛かったりする」
そんな事、もうとっくの昔から分かってた。
でも、そんなの認めるのが怖くて……あたしは見て見ぬ振りをしていた。
そんなの、意味無いっていうのに。
「その度に今のように、迷ったり立ち止まったりしてたら……琥侑は一流のパティシエにはなれない」
俊太さんは優しく……でも力強く、あたしに一つ一つ丁寧に言葉をこぼす。
「琥侑を本当に想ってるんだったら、
別れてくれないか?」


