すると琥侑は一瞬だけ口を手で押さえ、顔をしかめて言った。



「……っ別にお前の為に怒ったんじゃねぇよ。俺がムカついただけ」


「そっか」



……なんだ。

てっきりあたしの為だと思ったのに。


ていうか、自意識過剰みたいでちょっと恥ずかしいじゃん。




「でも何でお前は怒ってないんだよ。さっきの奴ら、ヒメの事言ってたんだぞ?」



琥侑はあたしの顔を見据える。

いつの間にやらあたしたちは、校門から少しだけ遠ざかっていた。



「わかってる。……でもあの人たちの言ってる事、間違ってないし……何も言えないよ」



確かにあたしは琥侑に比べて、どう考えても凡人。

あの人たちがああやって“意外”って思うのも無理ない。



「でもッ……――」



納得いかない様な顔で、琥侑はあたしに何かを言いかける。

……でも、すぐさまギュッと口を閉じて黙った。




「……それにさ」